赤面疱瘡?

今、「大奥」と言うドラマで、赤面疱瘡という流行病がフィクションとして設定されており、女子に罹らず、男子に感染すると死んでしまうという恐ろしい病気である。三代将軍家光公が病が重く、恐らく今の診断名では、痘瘡(天然痘・疱瘡と同義語)ではないかと言われている。死亡率40%に及んだ。江戸時代では、男子の人口に比べ、女子が少なかった。ここドラマでは、逆に設定している。山田光胤先生著の「春日局を叱りつけた岡本玄冶」から当時の状況がわかるので、一部引用してみる。「家光公の病気が進んで結痂期に至った時、侍医団は酒浴の治法を行おうとした。(酒浴とは酒を加えた温湯に浴する、一種の温浴療法であった。)この時将軍の乳母、春日局が進み出て侍医団に対し、「皆様は将軍様に酒浴の法をなさろうとおいでのようですが、一体全体酒浴の法等ということが既に唐土で行われているのですか?私共は一度も聞いたことがありません。唐土に無い方法を、恐れ多くも将軍様に施して、万一のことでもあれば如何なさるおつもりか!」と鋭く詰め寄った。その勢いに押されて居並ぶ医者達は皆一言もなく下を向いてしまった。唯一人の医者を除いて。この一人が誰あろう岡本玄冶その人であった。そして誰一人として春日に応える者のないのを見て取ると、泰然として静かに語り始めた。「漢土にないものでも、我国に存するものはいくらでもあります。唯に酒浴の法は現今では余り行われませんが、古はしばしば行われた良法であります。彼の地にないからといって、事実の良法を捨て去るということもありますまい。ましてや、実はこの方法は唐土の医書にも明らかに記載があります。これを知らないのは、あなた様がご存じないだけのことです。」といって懐中より一書を出して示した。当時大奥随一の実力者も玄冶の道理にかなった言には返す言葉もなかった。玄冶はさらに言葉を続けた。「このような医学的知見は、医者が長年辛苦の末ようやく得ることの出来るものです。かかる治療は又起死回生の高度の技術でもあります。仮にも素人が口出しするなどということは、現に戒めなければなりませんぞ。」と声を励まして叱咤する如く言ってのけた。春日は唯恥ずかしそうに引き下がったということである。この話の真偽はふめいであるが、この中に含まれる意義は決して小さいものではない。…」とある。

 

2012.11.24 旧ブログにて投稿

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